映画「ジュリアン」から僕らは不機嫌や癇癪の恐ろしさを学ぶ

ジュリアン

フランスで脚光を浴び、第74回ベネチア国際映画祭で最優秀監督賞を受賞した「ジュリアン」。監督は、2013年にアカデミー賞短編映画賞にノミネートされた「Just Before Losing Everything(すべてを失う前に)」のグザヴィエ・ルグラン。「ジュリアン」はこの短編映画を基に製作され、キャストもほとんど同じである。

もともとグザヴィエ・ルグラン監督は、三つに分けてDVによる夫婦の離婚を描きたくて短編を制作した。しかし、短編の続きは長編でなければならないと思い、「ジュリアン」が誕生。DV夫から逃げ続ける妻と子供という構図は変わらないものの、その緊迫感は前作を超えて暴力的なまでに僕らに襲いかかる。

目次

映画「ジュリアン」あらすじと概要

ジュリアン

【監督】
グザヴィエ・ルグラン

【出演】
トマ・ジオリア(ジュリアン・ベッソン)

レア・ドリュッケール(ミリアム・ベッソン:母)

ドゥニ・メノーシェ(アントワーヌ・ベッソン:父)

マティルド・オネヴ(ジョゼフィーヌ・ベッソン姉)

【日本劇場公開日】
2019年1月25日

【時間】
93分

【国】
フランス

「ジュリアン」あらすじ

離婚が決まった夫婦は、11歳の息子ジュリアンの親権で争っていた。結果的に週末は夫のもとで過ごすことになり、ジュリアンは母親を守るために父の車へと乗りこむ。無表情から漂う恐怖に耐えながら、ジュリアンは父との時間を過ごすのだが…。

ジュリアン

映画「ジュリアン」から僕らは不機嫌や癇癪の恐ろしさを学ぶ

この作品は、緩急がすごい。作中ほとんど音楽は使われず、自然音と人が発する声のみが耳元に響く。そのため、静寂で包まれるシーンも多いのだが、それが返って恐怖を倍増させる。まるでいつ落ちるかわからないジェットコースターに乗っているかのようだ。それも暗闇を直走る(ひたはしる)ジェットコースターだ。

さらに恐ろしいのが、夫の無表情である。他の人とは違い細かな表情を見せないためか、いつ感情の起伏が起こるのかがわからない。突発的に起こるであろうアントワーヌの癇癪に、ただただ緊張感が走る。まるでホラーだ。

しかし、僕らも人ごとではない。もちろん読者さまの中にアントワーヌのような人はいないだろうが、誰でも短気になったり不機嫌になったりはする。それらの感情が、いかにして周りに恐怖と嫌悪感を与えているのかは、今すぐにでも気付くべきだろう。僕自身もそうだ。この作品を通じて、アントワーヌを通じて気をつけようと感じた。

本作で描かれる物語は、一見して暴力的な夫が悪者なだけである。しかし本当の悪者は、アントワーヌの中にある他責思考や周りに恐怖を抱かせる癇癪と不機嫌である。つまり僕らの中にも必ず潜んでいる感情たちだ

僕らはこの作品を他人事として見てはいけないのだと思う。僕だって妻と喧嘩したときは、ムカついて水を飲んだグラスを大きな音を立ててバンッ!と置いてしまったり、ドアを強く閉めてしまったりすることがある。いくらムカついても、我慢するべきことだ。本当に反省する。

アントワーヌほどではないにしろ、誰でも探せば少しは思い当たる節があると思う。自分の胸に心当たりがないか、確かめて欲しい。そして周りに負のエネルギーを振り撒いていないか、いまいちど考えてみてほしい。

ジュリアン
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この記事を書いた人

中学高校で映画にハマり、20歳までに鑑賞した作品は1,000を超える。
現在はフリーライターとして、映画のコラムや企業のホームページなどの執筆を担当。映画のジャンルは問わず、面白そうな作品はなるべく映画館で鑑賞する“映画館好き”でもある。

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