ホラーやサイコ、スリラージャンルの映画は人間のディープな欲望を満たすために必要不可欠

人には誰しも、狂気的な側面が存在していると思う。いや、狂気と表すよりも、純粋な好奇心といった方がいいだろう。その好奇心は、ときに狂気と化して自分や周りに襲いかかる。欲望という名の怪物を上手に押さえ込まなければ、この世はマッドな世界となってしまうだろう。

その一例を紹介しよう。

小学生の頃、僕は灯油ストーブの上に置かれたヤカンが非常に気になった。なぜストーブの上にヤカンを置くとお湯が沸くのか。お湯が沸くということは、ストーブの上が熱いからに違いない。でも、本当に剥き出しのストーブが熱くて良いのか?熱かったら危険じゃないか…ジュッ。人差し指でアッツアツの灯油ストーブの表面を触った。たしかに熱いぞ、だからヤカンは沸くのだな。と思いながら、真っ白に火傷を負った人差し指を蛇口を捻って出てきた水に浸した。

多分、このようなエピソードは、みんなにもあると思う。人は自分の欲求に抗って生きているが、それがある一線を越えると、爆発する。心の中だけで留まっていた好奇心や捻れた欲望が、口から出てきた怪物のように周囲に襲いかかる。当然、僕のように自分の人差し指だけが被害に遭う場合もあるが、他人に不利益が生じる場合もあるだろう。

そうなっては、社会は許してくれない。みなが欲望という名の怪物を飼い慣らせないとなると、世界は混沌とした魔の世界になってしまうだろう。

しかし、この厄介な怪物さんを抑える方法がある。それが、映画だ。それも、残酷なまでに人間を痛ぶるサイコやスリラーといったジャンルである。ホラーもそうだな。

人は自分の欲望を抑え込むために、ぶっ飛んだ映画を見る。普段は決して覗き込むことが不可能な人間のグロテスクな姿や理不尽すぎる境遇を目の当たりにして、自分の中に潜む狂気を消化するのだ。

だからホラーやサイコ、スリラーといった映画ジャンルはなくならない。というか必要不可欠だ。

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この記事を書いた人

中学高校で映画にハマり、20歳までに鑑賞した作品は1,000を超える。
現在はフリーライターとして、映画のコラムや企業のホームページなどの執筆を担当。映画のジャンルは問わず、面白そうな作品はなるべく映画館で鑑賞する“映画館好き”でもある。

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