「ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ」映画初出演のドミニク・セッサに監督が観せたものとは…【最速レビュー!】

ホールドオーバーズ

僕は、この映画が大好きだ。

先日東京飯田橋にあるKADOKAWAさんで、試写会に参加した。大勢の観客を前に、ノストラジックに包まれた70年代のアメリカが映し出されたのだが、誰もがこの作品に笑みをこぼし、心を掴まれたことだろうと思う。

今回のレビューでは、本作の結末に関わるネタバレは一切せずに、小ネタを挟みながら感想を綴っていく。

映画ライターみくと
目次

「ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ」あらすじ

ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ

【監督】
アレクサンダー・ペイン

【出演】
ポール・ジアマッティ(ポール・ハナム)
ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ(メアリー・ラム)
ドミニク・セッサ(アンガス・タリー)

【日本劇場公開日】
2024年6月21日

【時間】
133分

【国】
アメリカ

あらすじ

1970年冬、ボストン近郊にある全寮制のバートン校。クリスマス休暇で生徒と教師のほぼ大半が家族と過ごすなか、生真面目で融通が利かず、生徒からも教師仲間からも嫌われている考古学の教師ハナム(ポール・ジアマッティ)は、家に帰れない生徒たちの“子守役”を任命される。
学校に残ったのは、勉強はできるが家族関係が複雑なアンガス・タリー(ドミニク・セッサ)。食事を用意してくれるのは寮の料理長メアリー・ラム(ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ)。メアリーは一人息子のカーティスをベトナムで亡くしたばかり。息子と最後に過ごした学校で年を越そうとしている。

引用:公式サイト

予告

70年代のアメリカを忠実に再現

本作に登場するボーリング場や映画館は、セットではなく実在する場所だ。ボーリングの玉は小さく、映画館は二階建て。そんな70年代の建物や文化を忠実に再現しながら、観客をノスタルジックな世界へと誘う。

実際に僕が座った席の隣のおばあちゃんが、随所で感慨深そうに頷いていのだから、本当に70年代の様子がそのまま映し出されていたのだろう。

ペイン監督は、映画という作品を一つのヒューマンドラマ、人生だと捉えているようでもある。だからこそ、当時の場所を忠実に“再現”するのではなく、本物を使うことにこだわるのだろう。

他にも小道具や衣装、テレビ番組なども70年代仕様である。もっとも印象的だったのは、オープニングだ。フィルムの音がジジジと場内に流れ、映像がパチパチと弾けて割れる。そんな出だしに一気に70年代に引き込まれるのだ。

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映画初出演のドミニク・セッサに監督が観せたものとは…

本作で注目すべきは、尋常じゃないほど繊細な演技を見せつけるキャスト陣だ。

なかでも本作が映画初出演となるドミニク・セッサは、約800人の応募者の中から見事に射抜いた実力者だ。

共演したダヴァイン・ジョイ・ランドルフ(メアリー役)はインタビューでこう語っている。「彼(ドミニク・セッサ)の型にハマらない演技が素晴らしかった。真似できないと思う。」

ドミニクの演技は、確かに初めての映画出演だとは思えないほど、美しかった。アンガス・タリーの微妙な心の傷を浮き彫りにし、反抗的でありながらも頭の良いティーンエイジャーを演じ切った。

そんなドミニクだが、撮影当時は本当に寄宿学校に通っていた学生である。もちんろん70年代のことなんか知らない。ペイン監督は、そんな若者であるドミニクに70年代の名作映画を何本も見せたのだそうだ。70年代の雰囲気や文化を少しでも身につけてほしいという狙いがあった。

本作でのドミニクの演技は、注目ポイントの一つだろう。

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過去と今を生きる私たち全員の物語

本作に登場する三人の主人公は、それぞれに悲しみを抱えている。それぞれの悲しみが浮き彫りになるとき、絆が育まれ、それぞれの過去が明かされるとき、絆が強固になる。そんな物語を見ていくうちに、心がホクホクしてくるのだ。

劇中は笑いも満載である。試写会の会場が何度も笑いに包まれたのも印象深いが、ラストに向かうにつれて、そのユーモアも哀愁が漂うほど心に沁み入る。

作中にこんなセリフがある。

「今の時代や自分を理解したいなら、過去から始めるべきだよ。歴史は過去を学ぶだけでなく、いまを説明すること」

ペイン監督は、今まさに傷を抱える人々へのメッセージを込めたようにも思う。いつの時代も、人は悲しみを覚え、苦しみ、嘆き、最後は乗り越える。過去の出来事は、今の自分形成している大事な要素なのだ。

しかし、同時に「人生を作り直すのは今からだ。過去は関係ない。」というようなセリフも後から登場する。この言葉に救われる人は多いのはないだろうか。確かに過去は今の自分を形成した要因であるが、今とこれからを変えていくには過去は関係ない。

現代では非常に多い鬱病などの精神的な病は、実は昔も今も変わらない。そして、それを否定するのではなく、包み込んだうえで希望を与えてくれるのが本作なのではないかと考えている。

人は誰しも少なからず悲しみを抱えている。ちょっぴり落ち込んだとき、ちょびっと悲しいとき、そんなときにこの映画を観てほしい。もちろん、元気なときでも大賛成だ。

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この記事を書いた人

中学高校で映画にハマり、20歳までに鑑賞した作品は1,000を超える。
現在はフリーライターとして、映画のコラムや企業のホームページなどの執筆を担当。映画のジャンルは問わず、面白そうな作品はなるべく映画館で鑑賞する“映画館好き”でもある。

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